第70回NHK杯全国高校放送コンテスト 沖縄県大会 朗読部門を振り返って
本来は6月1日、2日の2日間にわたって対面で行われるはずだった沖縄県大会ですが、台風2号の接近により実施できず、録音審査になりました。
エントリーする生徒の皆さんにすれば、一発勝負の対面は大変緊張するでしょう。
録音は、制限があるとはいえ何度もやり直しができますから、録音の方がいいと思うかもしれませんね。
どちらもメリット・デメリットはあろうかと思いますが、やはり対面での実施の方が得られることは多いかなと思います。
まず、実際に誰かに聞いてもらうことで伝わる内容だったかどうかを確認することができます。
朗読やアナウンスは誰かに情報を伝えるために行う訳ですから、聞いてもらってナンボです。
「自分はこう解釈して、その通りにやっているつもり」でしょうが、実際に伝わる表現になっているかどうかは別の話。
こればっかりは、練習で録音したものを聞くだけでは不十分なところ。
次に、他の人の朗読を聞くチャンスを失ってしまう。
過去に県代表になった人だけでなく、いろんな人のパフォーマンスに触れることは学びの機会です。
今回は台風の影響でその機会が失われてしまいましたが、それ以前に、例年、自分の発表が終わったらさっさと会場を後にする生徒がとても多い。
同じ学校の生徒とは一緒に練習してきたでしょうから、そちらよりは他校の発表を聞く方が発見が多いと思いますよ。
九州大会・・・その前に全国大会では沖縄の代表者だけでなく、他県の生徒の発表に耳を傾けてみるといいと思います。
さて。
今回私は仕事の都合で朗読の予選のみの審査となりました。
審査した範囲で感じたことを書いていきます。
1・発声発音はきちんとできて当たり前
毎年書いていますが、音声で情報伝達、表現する訳ですからきっちりできて当然な部分です。
発声は無理のない自然な発声であること。
アニメ声や、朗読用に「無理して」用意した他所行きの発声が結構ありました。
普段やらないことをやってもうまく行きませんし、聞いていても心地よくありません。
発音はちゃんと聞き取れる内容であること。
誰しも苦手な発音はあるものですが、練習が十分されていなくて聞き取りにくい、滑るというケースが大変多かったです。
この辺りは普段・・・放送部の練習以外、毎日の会話から意識的に練習し身に着けてゆくものです。
そうでなければ「使いこなす」ことはできません。
2・コンテスト発声やコンテスト喋りがなくならない
声優学校の新年度でよくあることなんですが、高校で放送コンテストに出ていた子は大体わかります。
独特な発声、語り口があるからです。
どうしてそうなるのだろうと毎年悩みますが、おそらく過去の入賞者の音源や、先輩達からそういう癖も受け継いでいるのだろうなあと思います。
生徒さんからすると「コンテスト調」と言われてもピンとこないのだろうと思います。
地声で素直に喋るということが、その先の表現をするにも重要で基礎の基礎だと理解して、実践してほしいです。
どうしたらわかるだろうかと考えてみたんですが、プロがどのようにしゃべっているか聞いてみることでしょうか。
自分達のパフォーマンスと比較してみるといいと思います。
全員が全員そうであるとは言い切れませんが、少なくとも意気込みすぎて変な喋りの癖が・・・とか
不自然な発声というのはあまりないと思います。(声優のキャラは別)
3・朗読とは何か、よくわかっていない
もう私の講座を受けてくださいとしか言いようがないですが。
音読、読み聞かせ、ナレーション、朗読は目的が違うので、求められるスキルは異なります。
朗読は小説や詩を音声で表現するものです。
ニュースを読む音読と、コミュニケーションが目的の読み聞かせとは違うのです。
今回、松尾芭蕉の『奥の細道』や、芥川龍之介の作品が課題図書でした。
プロが朗読したCDも多くあります。
参考に聞いてみたらよかったのにと思います。
少なくとも独りよがりの朗読や、テレビの副音声のような読み、
セリフだけに注力した演劇調、朗読のイメージを演じるというような読みにはならなかったのではと思います。
4・自分の声に合った作品をなぜ選ばない?
例えばYouTubeなどで勝手に好きな作品を朗読するなら、何を読んでもいいんですけど。
コンテストなのでね。
少しでも自分に合った作品を選んで、可能性を広げたほうがいいんじゃないでしょうか。
例えばとても可愛らしい声の方が、芥川の『地獄変』とか。
チャレンジとしてはいいんですが、作品世界とはミスマッチ。
作品が読み手を選ぶんですよね。
ここまで色々書きましたけど、総合すると朗読を聞いたことがない・・・というところに帰結するのではないでしょうか?
今は図書館でも朗読CDを借りることができると思いますよ。
YouTubeは玉石混合なので、参考程度に。
朗読だけでなくいろんな表現や本に触れること。
感性と想像力を磨くこと。
失敗も含めた経験をすることが表現に説得力と厚みを持たせるものになると思います。
高校生でしかできないこともたくさんあります。
そしてコンテストで代表になることだけが成功でもありません。
代表になった方は、これまでとは違う経験ができますね。
惜しくも代表になれなかった方は、どうしてなれなかったのかな。何が足りなかったのかなと考え、
成長のために実践する機会ですね。
頑張ってください。
追記
いや〜70回大会ですか。
びっくりですよね。
私が1年の時が33回大会ですからね。
審査する側になるとは思いませんでしたが。
上記のアレコレは全て自分にも返ってきますが、大切なことを忘れないためにもアップしておきますね。
芥川龍之介『地獄変』デモ
本来は6月1日、2日の2日間にわたって対面で行われるはずだった沖縄県大会ですが、台風2号の接近により実施できず、録音審査になりました。
エントリーする生徒の皆さんにすれば、一発勝負の対面は大変緊張するでしょう。
録音は、制限があるとはいえ何度もやり直しができますから、録音の方がいいと思うかもしれませんね。
どちらもメリット・デメリットはあろうかと思いますが、やはり対面での実施の方が得られることは多いかなと思います。
まず、実際に誰かに聞いてもらうことで伝わる内容だったかどうかを確認することができます。
朗読やアナウンスは誰かに情報を伝えるために行う訳ですから、聞いてもらってナンボです。
「自分はこう解釈して、その通りにやっているつもり」でしょうが、実際に伝わる表現になっているかどうかは別の話。
こればっかりは、練習で録音したものを聞くだけでは不十分なところ。
次に、他の人の朗読を聞くチャンスを失ってしまう。
過去に県代表になった人だけでなく、いろんな人のパフォーマンスに触れることは学びの機会です。
今回は台風の影響でその機会が失われてしまいましたが、それ以前に、例年、自分の発表が終わったらさっさと会場を後にする生徒がとても多い。
同じ学校の生徒とは一緒に練習してきたでしょうから、そちらよりは他校の発表を聞く方が発見が多いと思いますよ。
九州大会・・・その前に全国大会では沖縄の代表者だけでなく、他県の生徒の発表に耳を傾けてみるといいと思います。
さて。
今回私は仕事の都合で朗読の予選のみの審査となりました。
審査した範囲で感じたことを書いていきます。
1・発声発音はきちんとできて当たり前
毎年書いていますが、音声で情報伝達、表現する訳ですからきっちりできて当然な部分です。
発声は無理のない自然な発声であること。
アニメ声や、朗読用に「無理して」用意した他所行きの発声が結構ありました。
普段やらないことをやってもうまく行きませんし、聞いていても心地よくありません。
発音はちゃんと聞き取れる内容であること。
誰しも苦手な発音はあるものですが、練習が十分されていなくて聞き取りにくい、滑るというケースが大変多かったです。
この辺りは普段・・・放送部の練習以外、毎日の会話から意識的に練習し身に着けてゆくものです。
そうでなければ「使いこなす」ことはできません。
2・コンテスト発声やコンテスト喋りがなくならない
声優学校の新年度でよくあることなんですが、高校で放送コンテストに出ていた子は大体わかります。
独特な発声、語り口があるからです。
どうしてそうなるのだろうと毎年悩みますが、おそらく過去の入賞者の音源や、先輩達からそういう癖も受け継いでいるのだろうなあと思います。
生徒さんからすると「コンテスト調」と言われてもピンとこないのだろうと思います。
地声で素直に喋るということが、その先の表現をするにも重要で基礎の基礎だと理解して、実践してほしいです。
どうしたらわかるだろうかと考えてみたんですが、プロがどのようにしゃべっているか聞いてみることでしょうか。
自分達のパフォーマンスと比較してみるといいと思います。
全員が全員そうであるとは言い切れませんが、少なくとも意気込みすぎて変な喋りの癖が・・・とか
不自然な発声というのはあまりないと思います。(声優のキャラは別)
3・朗読とは何か、よくわかっていない
もう私の講座を受けてくださいとしか言いようがないですが。
音読、読み聞かせ、ナレーション、朗読は目的が違うので、求められるスキルは異なります。
朗読は小説や詩を音声で表現するものです。
ニュースを読む音読と、コミュニケーションが目的の読み聞かせとは違うのです。
今回、松尾芭蕉の『奥の細道』や、芥川龍之介の作品が課題図書でした。
プロが朗読したCDも多くあります。
参考に聞いてみたらよかったのにと思います。
少なくとも独りよがりの朗読や、テレビの副音声のような読み、
セリフだけに注力した演劇調、朗読のイメージを演じるというような読みにはならなかったのではと思います。
4・自分の声に合った作品をなぜ選ばない?
例えばYouTubeなどで勝手に好きな作品を朗読するなら、何を読んでもいいんですけど。
コンテストなのでね。
少しでも自分に合った作品を選んで、可能性を広げたほうがいいんじゃないでしょうか。
例えばとても可愛らしい声の方が、芥川の『地獄変』とか。
チャレンジとしてはいいんですが、作品世界とはミスマッチ。
作品が読み手を選ぶんですよね。
ここまで色々書きましたけど、総合すると朗読を聞いたことがない・・・というところに帰結するのではないでしょうか?
今は図書館でも朗読CDを借りることができると思いますよ。
YouTubeは玉石混合なので、参考程度に。
朗読だけでなくいろんな表現や本に触れること。
感性と想像力を磨くこと。
失敗も含めた経験をすることが表現に説得力と厚みを持たせるものになると思います。
高校生でしかできないこともたくさんあります。
そしてコンテストで代表になることだけが成功でもありません。
代表になった方は、これまでとは違う経験ができますね。
惜しくも代表になれなかった方は、どうしてなれなかったのかな。何が足りなかったのかなと考え、
成長のために実践する機会ですね。
頑張ってください。
追記
いや〜70回大会ですか。
びっくりですよね。
私が1年の時が33回大会ですからね。
審査する側になるとは思いませんでしたが。
上記のアレコレは全て自分にも返ってきますが、大切なことを忘れないためにもアップしておきますね。
芥川龍之介『地獄変』デモ